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棚田食育士養成講座(中級前期) ご報告

〜農業がわかれば食育もおもしろい〜

2009年6月20日(土)21(日)



棚田食育士養成・食育実践講座の中級前期は、6/20(土)と21(日)に予定通り開催しました。
参加者は7人と少なかったものの、その分濃い内容を体験してもらえました。20(土)は、まずは田植えから。5月の少雨に加えて空梅雨で水がなくて困っているのですが、Tさんが何とか準備をしてくれて、1枚だけは水が貯まっていました。今年はヒノヒカリを1箱分植えました。1カ所に2本ずつ25cm間隔で植えた苗は小さく、大丈夫かなと不安になるほどですが、半年後には立派な姿を見せてくれるでしょう。

田植えを待つ稲 紐に沿って稲を植えます

晴天の下 一列に並んでみんなで田植え

昼食は、伝統的なさなぶり料理です。塩鯖の入った煮染め、暖かいそうめん、赤飯、酢の物、きんぴら、ゼリーでした。さなぶりは、田植えが一段落した後に、今年の豊作を祈りながら集まってお祈りして飲食をしています。さなぶりの「さ」は田の神様。
春先に、山から下って来る時に「さくら」(くら=場所)で一休みして、田に下って来たら「さなえ」を「さおとめ」が植えるわけです。その神様が、また山に登るので「さのぼり」。これがちょっと変形して、水俣では「さなぶり」と言うのです。

さて、煮染めは重要な食事にはたいてい作りますが、さなぶりでは特にごちそうという意味で、塩鯖が入ります。煮た塩鯖というのは、焼いたものとはまた違って美味でした。煮染めはじゃがいも、かぼちゃ、インゲン豆、切り干し大根、干し竹の子(ここまでは自家製)、ごぼう、にんじん、こんにゃく、厚揚げです。

地元の方に当時のさなぶりの様子を聞きました 山盛りそうめん(右手前)が印象的

赤飯は香り米の万石100%です。ゼリーは伝統的なさなぶりには登場しませんが、キンカン蜂蜜漬けと肉桂酒(どちらも自家製)があったので、せっかくなので利用しました。料理担当の女性陣も同席して、話が弾んでいました。

午後は、霧島食育研究会と愛林館の活動を簡単に報告した後、若い百姓の吉田浩司さん、天野浩さん(どちらも34歳)の話を聞きました。

吉田さんは長崎県出身。鹿児島大在学中は環境関係の活動を活発に行い、卒業後結婚して義父上のみかん山を継ぎました。甘夏と不知火しかなかったみかん山を、河内晩柑、グレープフルーツ、不知火を3本柱とするように苗を植え、他にライム、レモンなども植えて、収穫期を9月から5月まで続くように工夫しています。出荷先は大地を守る会やらでぃっしゅぼーやなど、有機農産物の流通では有名なところが多いです。

天野さんは、開拓で石飛に入って来た祖父上から3代目のお茶農家です。お茶の産地はやぶきたなどの新しい品種を大面積で作ることが主流でしたが、水俣は産地化に遅れて実生の在来品種がたくさん残っていました。その木を生かして、無農薬でのお茶栽培を行っています。もちろん、やぶきた、さやまかおりといった品種もあります。緑茶、紅茶、ウーロン茶も作っています。

お茶農家の天野さん みかん農家の吉田さん

水俣市役所にいた吉本哲郎さんの地元学に出会い、自分の農業の行き先もはっきりしてきたということです。直販をすることで、消費者とのつながりが深まり、おいしいお茶のいれ方もずいぶん教えてもらったとか。農業大学でお茶栽培は習ったのですが、いれ方は全く習わなかったそうで、ここは農業教育の問題点でもありますね。

お勉強の後は、ちょっと時間ができたので、棚田見学。その後、Kさんの畑を見学しました。食べられるモノが珍しく少なかったのですが、きゅうり、うどの葉、にら、枇杷をいただきました。アブラナ科の冬野菜が完全になくなり、ナス科や豆の夏野菜がぐんぐんと育っていました。

自家製きゅうりをいただきました 多種類の野菜を育てているKさん(右)

夕方は「創作 里山のさなぶり料理」。2人1組になって、手持ちの野菜を見ながら献立を考え、3人分を作り、かっこよく盛りつけるというものです。講師だった吉田さんも面白くなって参加しました。献立を15分で考え、60分で料理と盛りつけを終了です。
いつもながら、時間に追われてかなりの圧力を感じながらの作業ですが、心地よい緊張感が流れていました。時間をかけなくても、おいしい料理はできるのです。

目の前の材料を使って グループで相談して献立を考えます

協力し合って1時間で調理 盛り付けにも気を使って

夜の森の観察は、月が暗くて久々に自分の手さえ見えないという暗闇でしたが、雨が少なくて乾燥していたので、あまり落ち葉が光らなかったのが残念です。オオマドボタルの幼虫はすぐにつかまったので、こちらはよく見ることができました。

夜の照葉樹林観察 焼酎文化講座

実習の最後は焼酎文化講座。軽く目隠しテストで飲み比べの後、ゆっくり飲みました。

さて、翌日は一汁二菜の朝食作り。夕食が60分ですから朝食は30分です。前日よりも皆が仲良くなって、とってもおいしいものができました。

講義前半は「あなたにとって食育って何? 10分で語る食育の定義」です。全員に、食育の定義と目指すことを10分で発表してもらいます。こちらからの連絡が不十分で、画像や紙などを用意した人がいませんでしたが、口だけで思いを伝えることになって、かえって良かったかもしれません。「結論をまず言う」「キーワードは一つまたは三つにまとめる」「抽象と具体のバランスを」といったところを皆さんにはお伝えしました。それぞれの内容は共催者千葉さんが次のようにまとめてくれました。

1:世界平和≪多様性・共感一致・寛容性を基礎として≫(霧島市Hさん)
2:地域のつながりを「おすそわけ」と「家庭菜園」で(霧島市Nさん)
3:保育園で目指す食糧自給率70%(植木町Mさん)
4:茶道で伝える心と思いやり食育(城南町Nさん)
5:地元のつながりのとらえなおし(福岡市Tさん)

皆さんが共通に「食育は何かを実現するための手段である」と考えていたところは、大変良かったです。毎回感じますが、「食育を通じて○○する」とわかっていれば、浅薄な食育ブームに踊って消耗することはないでしょう。

あなたにとって食育とは… 発表する技術も学びます

参加者が少なかったので、講義後半は「今年度中に実現できそうな現実的な事業を構想する」こともやってみました。5W1Hに予算も含めて、それぞれにできそうなアイディアが出ました。千葉さんのまとめでは

1:「アグリサイズ」農作業とエクササイズ
2:芽でたい料理会(もやし作りと料理)
3:保育園で「お母さんの畑」事業
4:茶道で「手作りお菓子」と心のおもてなし教室
5:「五木の柚子」食育フィールドワーク

というところです。
このようにして、充実した二日間を終えました。中級編は、10月の稲刈りへと続きます。皆様ご参加なさいませんか?




お問い合わせ:〒867-0281 熊本県水俣市久木野 1071
愛林館 TEL&FAX 0966−69−0485 (土日祝はレストランも営業中)