石垣積みワークショップのねらい
愛林館の館長となって久木野に住んで以来、私は毎日家の周囲の石垣と棚田を見て暮らしている。その規模、美しさにはすっかり惚れ込んでいる。それで、石垣についてもっと理解を深めるような行事をしたいと常々思っていた。幸い、周囲の少し年配の方々は誰でも石を積める技術があるという。
数百人を越える研修者に棚田の案内を行ったが、皆が一様に石垣のすごさには感動している。愛林館の研修者の特徴として、自分も棚田を耕作している人が多いのだが、「自分のところよりも悪い条件なのに、こんなにきちんと耕作して手入れしている」と驚くばかりである。確かに、石という自然素材は年々美しさを増し、四季折々にいろいろな表情を見せてくれる。
石垣の素晴らしさをもっと深く体験したい。それには石垣や棚田を見て歩くことから一歩踏み込んで、石垣を積んでみることだ。そう思っていたところへ折良く吉井和久さんより、棚田の修復を市民参加でやってみないかという申し出があった。
石垣はところどころ壊れる。それを所有者がそれぞれに修理しながら使い続けているわけだが、高齢化などで修理をできないところも今後増えて行くかもしれない。棚田の耕作と同じで、労働力不足はしばらくは続くだろう。
それで、素人が労働力となれないかどうか、試験も兼ねようという目的も持って、今回のワークショップを企画した。
実行するに当たって、福岡県黒木町で「国際棚田ワーキングホリデー」を3年前から開催している四季彩館の椿原さんのところで、石垣積みに参加した。講師一人で何人の素人を教えられるものかを見たかったが、やはり1対1、せいぜい1対2ということがわかった。
また、石垣積みなどの手仕事はすべて、「段取り7分に仕事3分」である。吉井和久さんは石垣積みの経験も少しあるので、床堀り、石の準備(積み石とぐり石)などを整えてくれたので、参加者は石垣積みに集中することができた。
集中した結果がどうなったかは報告書の通りである。イベントの後の充実感は、夏の下草刈に勝るとも劣らないものがあった。今後、恒例化して行きたい。
愛林館館長 沢畑 亨 |